私的評価
川島徹著『メーター検針員テゲテゲ日記-1件40円、本日250件、10年勤めてクビになりました』を読みました。新聞広告でこの本のことを知り図書館で予約、それから半年ほど待ってやっと借りられました。数か月待った甲斐がありました。サクッと読めてとても面白い本です。メーター検針員さんの悲喜こもごもがいっぱい詰まっていて、しかもところどころに現代社会の矛盾を追及していたりします。とにかく検針に関わるいろんなエピソードが書かれていて、笑いあり涙あり、そして今まで知らなかったことがたくさん分かります。
★★★★★
『メーター検針員テゲテゲ日記』とは
内容説明
はじめにより
電気メーターの検針は簡単である。
電気メーターを探し、その指示数をハンディに入力し、「お知らせ票」を印刷し、お客さまの郵便受けに投函する。1件40円。
件数次第で、お昼すぎに終わることもあれば、夕方までかかることもある。仕事は簡単なので、計器番号などの小さな数字を読みとれる視力があり、体力があれば、だれにでもできる。
しかし、雨の日も、台風の日も、雪の日も、そして暑い日も、寒い日もある。
放し飼いの犬もいれば、いらいらした若い男も、ヒステリックな奥さんもいる。
低賃金で過酷で、法律すら守ってくれない仕事がどこにでも存在しつづけ、そこで働く人たちも存在しつづける。
ただ、そうした仕事をしている人たちも、自分の生活を築きながら、社会の役に立ち、そして生きていることを楽しみたいと思っているのである。過酷な仕事の中にも、ささやかな楽しみを見つけようとしているのである。それが働くということであり、生きるということではないだろうか。
(目次)
まえがき 1件40円の仕事
第1章 電気メーター検針員の多難な日常
某月某日 激怒した若い男:引っ越し中の検針作業
某月某日 執拗な抗議:通路をふさぐポリバケツ
某月某日 七つ道具:職務質問間違いなしの代物たち
某月某日 稼げる地区、稼げない地区:だれだってラクに稼ぎたい
某月某日 女子更衣室の奥のメーター:あるクラブでの検針
某月某日 脚立の上で悲しくなる: 「あなたは社長さんです」
某月某日 足のすくむ検針:落ちるときにはせめて…
某月某日 テゲテゲやらんな:騒がしいガールフレンド
某月某日 台風一過:屋根まで飛んだ♪
第2章 検針員と、さびしい人、さびしい犬
某月某日 話をしたくてたまらない:さびしい独居老人たち
某月某日 セクハラ:さびしさと恋愛感情
某月某日 些細な喜び:のべ2万個の数字の中で
某月某日 つながれっぱなしの犬:誰に似ている?
某月某日 「この犬は咬みつきません」:テリトリーに侵入する不審者
某月某日 検針員の喜びと楽しみ:郵便受けのおもちゃのヘビ
某月某日 手抜きの誘惑:邪心にとり憑かれて
某月某日 子どもたち:無邪気さの魔法
某月某日 外資系企業から検針員へ:どうして検針員になったか
第3章 誤検針、ホントに私が悪いの?
某月某日 最悪を覚悟せよ:誤検針の恐怖
某月某日 覗きの権利:カギは郵便受けの中
某月某日 道の真ん中の××:鹿児島の動物たち
某月某日 急性メニエール病:それでも私が検針に行ったワケ
某月某日 奇妙な張り紙: Q電力は現場を知らない
某月某日 ひっくり返された植木鉢:会社と検針員の信頼関係
某月某日 支社長との昼食会:そのとき、課長の顔色が変わった!
某月某日 とんでもない客との遭遇:業務委託の実態
某月某日 経費削減: 1本2000円の企業努力
某月某日 ぶら下がった計器:取りつけ直すのに2カ月
某月某日 姉の家を出る:ついにその日がきた
第4章「俺には検針しかできない」
某月某日 休日、苦情の電話: 「お知らせ票」を入れたのは誰?
某月某日 えこひいき:月27万円稼ぐ女性検針員の秘儀
某月某日 連帯責任:ハンディ盗難事件の後始末
某月某日 緊急掲示:検針員たちの悲鳴
某月某日 検針不能: 1件60円の赤字
某月某日 スマートメーター:検針員はもういらない
某月某日 花を愛する人は:山之上さんの完璧な謝罪
某月某日 「取りに来させろ! 」:壊れた50万円のハンディ
某月某日 ハチの巣とおまわりさん:切断された引きこみ線
某月某日 ふたつの死:東郷さんと高木さん
某月某日 クビ宣告:定年まであと5年を残して…
あとがき メーター検針員、その後
著者等紹介
川島徹[カワシマ トオル]
1950年鹿児島県生まれ。大学卒業後、外資系企業に就職。40代半ばで退職し、貯金と退職金で生活しながら、文章修業をする。50歳のとき、鹿児島に帰郷、巨大企業Q電力の下請け検針サービス会社にメーター検針員として勤務。勤続10年目にして突然のクビ宣告を受ける。その後、介護職などを経て、現在は無職。70歳を迎えて、本書の刊行により長年の夢を実現させる。
フォレスト出版
感想・その他
副題には「1件40円、本日250件、10年勤めてクビになりました」とあります。著者は作家になる夢を諦めきれず、40代で東京の外資系企業を辞め、地元鹿児島へ。生活のため50歳でQ電力のメーター検針員となります。実際はQ電力の下請け検針サービス会社との業務委託契約で、社員ではなくいち個人事業主となるようです。その業務委託が曲者で、移動のガソリン代や電話代はもちろん、仕事中に事故を起こせばそれも個人負担で、貸与させた機械を壊せば、もちろん自己負担で弁償だったそうです。業務委託は1年毎の契約となり、著者には11年目の契約はありませんでした。モノ言う人物で、検針サービス会社から煙がられていた存在だったのが、クビの本当の理由でした。それから介護の仕事などをして、とうとう夢であった本(この本)の出版に至りました。この本を読んで、ガスだか水道だか電気だか分かりませんが、我が家に検針員さんがやって来たら、やさしく声を掛けてあげようと強く思いました。しかし、現在ではスマートメーターという検針が必要でないメーターが取り付けられるようになっているそうで、検針員さんを見掛けることも少なくなっていくことでしょう。
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