私的評価
江戸はリサイクルとエコロジーの発達した生活をしていた、とよく見聞していました。本書『江戸の糞尿学』を読んで、改めて糞尿の処理方法に運搬方法など、江戸の生活がどういうものであったのか思い浮かべてみました。江戸から明治・大正・昭和、そして平成の近代までのことが書いてあります。絵も写真もたくさん挿入されており、大変興味深く読むことができました。★★★★☆
『江戸の糞尿学』とは
永井義男著『江戸の糞尿学』を読みました。「糞尿」の言葉と、この本の表紙に釣られて借りました。「糞尿」、どうしてこんなにワクワクする言葉なんでしょうね。
日本人にとって、“糞尿"は、産業であり文化だった。
裏長屋から、吉原、大奥までのトイレ事情、愛欲の場所だった便所、覗き、糞尿趣味……
初の“大江戸スカトロジー"。
秘蔵図版・多数収載。
江戸では、糞尿の利用が“循環システム"として完成していた。これが、いかに先進的で、環境と調和したものだったかは、汚物にまみれていた西洋の大都市パリやロンドンなどと比較するとよくわかる。
江戸時代の日本人にとって、糞尿は価値あるものだった。そのため、産業にとどまらず、文化でもあった。糞尿や便所、汲み取りにまつわる記録や逸話、図版は数多い。
本書は、江戸時代における日本人と糞尿の関係を、産業・文化など多面的にまとめた、初めての“大江戸スカトロジー(糞尿学)"である。
目次
序章 肥桶を担いだ男たち―彼らが百万人都市・江戸の生活と食料を支えた
第1章 汲み取りが都市を救った―江戸時代以前の糞尿事情
第2章 江戸の便所と汲み取り事情
第3章 江戸での都市生活と便所
第4章 下肥の循環システム経済―「黄金の宝」だった糞尿
第5章 明治以降の汲み取り事情
付録 小説・天保糞尿伝
【著者紹介】
永井義男 : 小説家、江戸文化評論家。1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『図説 吉原入門』(学習研究社)、『非情のススメ――超訳 韓非子』(辰巳出版)、『江戸の性語辞典』(朝日新聞社)ほか。
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感想
図書館で予約して借りましたが、この本の表紙にはドギマギされられました。同時に三冊を予約しており、運が悪いことにこの本が一番上になっていました。もちろん受付の職員さんは女性です。どんな顔をするのか観察しましたが、至って普通に対応してくれて、ホッとしました。そのドギマギする表紙ですが、厠で用をたす女性を後ろから羽交い絞めにして「拭いてやろうか、なんなら舐めてやってもいいぜ」と言っている絵となります。いつの時代にもいたようです、このような変態野郎が。糞尿は貴重な肥料として売買されており、化学肥料が出回るまでは高額な金額で農家に引き取られていました。もちろん農家がお金を払って糞尿を仕入れます。本来なら厄介な代物である糞尿が、お金を貰って引き取ってくれるお宝。すばらしいリサイクル商品でしたが、その肥料としての役目がなくなり困ったことになりました。今度はお金を払って引き取ってもらうことに。業者(自治体)はそれを海に投棄。驚いたことにそれは平成9年まで続けられていたというその事実。江戸前の魚が旨いというのは、栄養豊富な人糞を食べているからみたいですよ。貰い手が無くなった糞尿は、お宝から厄介者になりました。
私が幼少を過ごした昭和40年代の名古屋でも汲み取り便所で、肥桶を担いだ農家さんがいっぱい歩いていました。畑には糞尿を醗酵させる肥溜めが埋めてあり、近寄ると異臭を放っていました。野菜の根元には肥となった糞尿がよく付いており、それで寄生虫が体内に入りました。学校では蟯虫検査があり、それに引っかかるとクラスの皆から弄られたものです。
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