私的評価
河野啓著『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』を図書館で借りて読みました。話題の本なので、約五か月待ちました。この本を手にするまで五か月待って、読むのに一日。それほど引き込まれました。
北海道放送でディレクターで2008年から2009年の約2年間、ドキュメンタリー番組制作のために栗城さんを密着取材した著者が、栗城史多という登山家とは何だったのか、どうして命を落としてしまったのか考えます。
推理小説を読んでいるような面白さで、ついつい貴重な休みであった日曜日をまるまる費やしてしまいました。
★★★★★
『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』とは
内容紹介
【第18回(2020年)開高健ノンフィクション賞受賞作!】両手の指9本を失いながら〈七大陸最高峰単独無酸素〉登頂を目指した登山家・栗城史多(くりきのぶかず)氏。エベレスト登頂をインターネットで生中継することを掲げ、SNS時代の寵児と称賛を受けた。しかし、8度目の挑戦となった2018年5月21日、滑落死。35歳だった。彼はなぜ凍傷で指を失ったあともエベレストに挑み続けたのか? 最後の挑戦に、登れるはずのない最難関のルートを選んだ理由は何だったのか? 滑落死は本当に事故だったのか? そして、彼は何者だったのか。謎多き人気クライマーの心の内を、綿密な取材で解き明かす。
≪選考委員、大絶賛≫
私たちの社会が抱える深い闇に迫ろうとする著者の試みは、高く評価されるべきだ。――姜尚中氏(政治学者)
栗城氏の姿は、社会的承認によってしか生を実感できない現代社会の人間の象徴に見える。――田中優子氏(法政大学総長)
人一人の抱える心の闇や孤独。ノンフィクションであるとともに、文学でもある。――藤沢周氏(作家)
「デス・ゾーン」の所在を探り当てた著者。その仄暗い場所への旅は、読者をぐいぐいと引きつける。――茂木健一郎氏(脳科学者)
ならば、栗城をトリックスターとして造形した主犯は誰か。河野自身だ。――森 達也氏(映画監督・作家)
目次
序幕 真冬の墓地
第一幕 お笑いタレントになりたかった登山家
第二幕 奇跡を起こす男と応援団
第三幕 遺体の名は「ジャパニーズ・ガール」
第四幕 エベレストを目指す「ビジネスマン」
第五幕 夢の共有
第六幕 開演! エベレスト劇場
第七幕 婚約破棄と取材の終わり
第八幕 登頂のタイミングは「占い」で決める?
第九幕 両手の指九本を切断
第十幕 再起と炎上
第十一幕 彼自身の「見えない山」
第十二幕 終演~「神」の降臨~
最終幕 単独
あとがき
著者紹介
河野 啓[コウノサトシ]
1963年愛媛県生まれ。北海道大学法学部卒業。1987年北海道放送入社。ディレクターとして、ドキュメンタリー、ドラマ、情報番組などを制作。高校中退者や不登校の生徒を受け入れる北星学園余市高校を取材したシリーズ番組(『学校とは何か?』〈放送文化基金賞本賞〉、『ツッパリ教師の卒業式』〈日本民間放送連盟賞〉など)を担当。著書に『よみがえる高校』(集英社)、『北緯43度の雪 もうひとつの中国とオリンピック』(小学館。第18回小学館ノンフィクション大賞、第23回ミズノスポーツライター賞優秀賞)。
紀伊国屋書店
感想・その他
栗城史多さんの名前は「ノブカズ」と読みます。私も2012年くらいのNHKの番組を観ていた頃は、彼のファンでした。歩いているところをカメラで撮って、それを回収するために来た道を戻っての繰り返し…。凄いなぁ、と感じ入っていました。ところが何かの拍子で、彼に対しての批判的な発言をする登山家がいっぱいいることを知って、彼に対する考え方が変わってしまい急速に興味を失ってしまいました。世界七大陸最高峰「単独無酸素」も、そもそも通常酸素ボンベが必要とされるのは標高8000メートルを越えるエベレストのみであり、栗城さんが達成したその他の六大陸の山々においては酸素ボンベを必要しないそうです。また「単独」も厳密な定義はないそうですが、一般的には「登山界で言われる「単独登頂」とは、登山の行程の全てを一人で行い、初登頂者のベースキャンプを基準にしてベースキャンプより上で他者からのサポートを一切受けず、あらかじめ設営されたキャンプ、固定ロープ、ハシゴ等も使わずに登ること(アルパインスタイル)を指す(Wikipedia)。とのことですが、栗城さんは大規模な栗城隊を組んで、雇ったシェルパが固定ロープ設置などのルート工作やキャンプ設営の前準備を行い、無線により気象情報や行動計画などのサポートを受けて登っていたそうです。
また、2012年の遠征時の凍傷で9本の指を失うことになりましたが、その凍傷もその筋の人から見ると異様な凍傷だったのこと。キレイに一直線で凍傷になっていたそうで、意図的に凍傷になったのではと疑われているようです(やり過ぎて切断に至ってしまった?)。
栗城さんの関係者から登山家までかなりの人へインタビューしていますが、著者の推察部分も多く書かれており、それはそれで考えて読むことを大切ではないでしょうか。
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