私的評価
中田整一著『四月七日の桜 戦艦「大和」と伊藤整一の最期』を図書館で借りて読みました。本書は海軍軍人としての伊藤整一の人となりが書かれており伝記本と言えます。最後の戦艦大和の戦いの中での伊藤整一の描写はほんの数行です。大和の戦闘詳細などはまったく書かれておらず、その点は期待しないでください。
★★★☆☆
『四月七日の桜 戦艦「大和」と伊藤整一の最期』とは
内容説明
司令長官として「大和」とともに沈んだ父・伊藤整一。沖縄へ出撃した特攻機で散った息子・叡。二人を追うように娘を残して逝った母・ちとせ。悲劇が立てつづけに伊藤家を襲う。しかし、伊藤が植えた桜は、今もその命日を忘れずに満開となる。新資料多数掲載。山本五十六から伊藤に宛てた書簡・色紙、アメリカ国立公文書館から戦艦「大和」から発信された無線暗号の解読資料、戦死した父・兄から家族への手紙など。
山本五十六に最も信頼された男が家族を思うとき――司令長官として「大和」とともに沈んだ父。沖縄へ出撃した特攻機で散った息子。二人を追うように娘を残して逝った母。昭和20年4月7日から翌年9月までに、悲劇が立てつづけに伊藤家を襲う。ただし、伊藤が植えた桜は、今もその命日を忘れずに満開となる。
新資料多数掲載。山本五十六から伊藤に宛てた未公開書簡・色紙、アメリカ国立公文書館から戦艦「大和」から発信された無線暗号の解読資料、戦死した父・兄から家族への手紙など。
海軍大将・伊藤整一は、沖縄へ向かう際、撃沈された戦艦「大和」を率いる司令長官として、艦とともに海に没した知米派軍人として知られる。ちなみに映画『男たちの大和』では、渡哲也が演じた。伊藤を描いた書籍としては、これまで「大和」に乗艦し一命をとりとめた作家・吉田満の『提督伊藤整一の生涯』があが、本書は、伊藤の家族愛、その独断により若者たち多数の命を救った面を中心に焦点をあてる。
昭和16年9月、開戦が不可避となったとき、伊藤は山本五十六ら知米派の期待を受け、作戦の意思決定機関・軍令部のナンバー2次長につく。しかし、おのれの考えと逆に海軍は破滅への道を突き進む。異例の3年4ヵ月次長の職にあった伊藤は、日本の敗戦を意識し、死に場所を求め「大和」と共に前線に立つ。その死は、4月7日だった。
父の影響から海軍士官学校へ進み、飛行兵となった息子・叡も、「大和」出撃時に上空から援護する部隊に属していたが、その沈没後、4月27日に沖縄への特攻で命を落とす。5月には東京大空襲で伊藤家が全焼する。そしてその後には、母にも悲劇が待ちうけて・・・
目次
第一章 若い命を救った長官の決断
第二章 有明海が育んだ偉丈夫
第三章 士官として父として
第四章 山本五十六が信頼する軍令部次長
第五章 敗戦責任そして戦艦「大和」へ
第六章 だしぬけの海上特攻命令
第七章 伊藤司令長官の死
第八章 神風特攻・叡の戦死
第九章 戦死を信じられなかった母
第十章 校長室の戦艦「大和」
著者等紹介
中田 整一[ナカタ セイイチ]
ノンフィクション作家。1941年熊本県生まれ。66年九州大学卒業後、NHK入局。おもに現代史を中心にドキュメンタリー番組を手がける。『戒厳指令「交信ヲ傍受セヨ」二・二六事件秘録』で、日本新聞協会賞・文化庁芸術祭優秀賞などを受賞。大正大学教授を経て、執筆に専念。『満州国皇帝の秘録―ラストエンペラーと「厳秘会見録」の謎』で、毎日出版文化賞・吉田茂賞を、『トレイシー―日本兵捕虜秘密尋問所』で、講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書『盗聴二・二六事件』『最後の戦犯死刑囚』などがある。
講談社BOOK倶楽部
感想・その他
この本の主人公・伊藤整一中将(戦死後大将)は、「一億総特攻の魁となっていただきたい」との言葉で、この自殺行を了承したようです。そこは帝国海軍に軍人、命令には逆らえなかったのでしょう。とは言え、第二艦隊の7000人の命を思えば、断固反対して欲しかったところです。また伊藤整一中将は大の愛妻家で、最後の出撃前に妻ちとせに宛てた遺書が残っています。
此の度は光栄ある任務を与えられ、勇躍出撃、必成を期し致死奮戦、皇恩の万分の一に報いる覚悟に御座候
此の期に臨み、顧みるとわれら二人の過去は幸福に満てるものにして、また私は武人として重大なる覚悟をなさんとする時、親愛なるお前様に後事を託して何ら憂いなきは、此の上もなき仕合せと衷心より感謝致候
お前様は私の今の心境をよく御了解になるべく、私が最後まで喜んでいたと思われなば、お前様の余生の淋しさを幾分にもやわらげることと存じ候
心からお前様の幸福を祈りつつ 四月五日
いとしき 最愛のちとせ殿
妻ちとせも非業の死を迎えるのであるが、こんなラブレターのような遺書をもらったちとせさんは、幸せであったに違いない。また、戦死したと知らされた息子が生きているという情報(実際は間違いだった)があった中で、亡くなったことだけがせめてもの慰めである。
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