私的評価
浅田次郎著のエッセイ集『かわいい自分には旅をさせよ』を読みました。図書館で借りました。
私は浅田さんのエッセイはあまり好きではありません。成功した人間の傲慢さがチラホラ垣間見えるんです。ラスベガスの辺りのエッセイなんて「あっ、そう、すごいね」と愚痴でも言いたくなります。まあ、貧乏人・凡人のひがみではあります。ただ、小説の方は大好きなんですよ。
★★★☆☆
『かわいい自分には旅をさせろ』とは
三島自決に茫然とした雌伏の時代から、直木賞作家として世界を飛び回る雄飛の時代まで、「生きる作法」が満載の未刊行エッセイ集。
取材旅行やカジノの旅、『蒼穹の昴』以降関わりが深まった中国への旅など、旅の歓びに満ちた日々が綴られます。他にも三島をはじめ先達への哀感に満ちた随筆や、「父の不在」などの社会評論、日本ペンクラブ会長として3・11後に赴いたチェルノブイリ視察の報告など盛り沢山。街道旅での出会いを描いた短篇「かっぱぎ権左」も特別収録。
目次
第1章 帰れずとも帰るべき町
第2章 パリからのラブ・レター
第3章 かっぱぎ権左
第4章 下戸の福音
第5章 回天の一日
第6章 男の不在
第7章 灰色のマトリョーシカ
文藝春秋
著者等紹介
浅田次郎[アサダ ジロウ]
1951年東京生まれ。『地下鉄(メトロ)に乗って』で吉川英治文学新人賞、『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞、『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、『お腹召しませ』で司馬遼太郎賞と中央公論文芸賞、『中原の虹』で吉川英治文学賞、『終わらざる夏』で毎日出版文化賞を受賞。2015年紫綬褒章を受賞。『蒼穹の昴』『シェエラザード』『わが心のジェニファー』『獅子吼』など著書多数。
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感想
エッセイ集ですが、その中に短編小説「かっぱぎ権左」があります。甲府勤番御組頭・永井権左衛門は、三河以来の譜代御家人として薩長に抵抗し上野の山に向かいたい。しかし、老いた母に病んだ妻、そして4人の子どもを思うとどうしても大義に殉ずることはできなかった。しかし、すぐに蓄えも無くなり、食うに困って甲州街道小仏峠で追剥をしようとしていた。そこに通りがかったのが、いかにも豊かな感じの商人風情の旅人…。これが実に泣かせてくれます。これぞ浅田次郎!とも言える作品でした。強いて言えば、『壬生義士伝』のミニ版とでも言いましょうか。会社での昼休み、人目も憚らず涙と鼻水でボロボロになりました。この「かっぱぎ権左」だけ読めただけで、この本を読んだ甲斐がありました。
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