私的評価
逢坂冬馬著『同志少女よ、敵を撃て』を図書館で借りて読みました。図書館で予約しましたが10か月ほど待たされたという人気作。新聞で同書の広告を見てずっと気になっていて、図書館から本が用意できましたとのメールが来た時は、やっと読めると思うと心が弾みました。
分厚い本でしたが、最初から物語に引き込まれ、最後までずっと引き込まれたままで、あっという間に読めました。しかし、待った10か月の間にこの本への期待が大きく膨らみ過ぎて、いざ読んでしまうと「それほどでも…」と思えてしまった私です。
私は『スターリングラード』という映画が好きで何回か観ており、この本の狙撃兵の戦闘の様子を映画から想像できました。それにより、より一層緊迫感が感じながら読めました。この本を読む前に映画『スターリングラード』を観ることをお勧めしたいです。
★★★☆☆
『同志少女よ、敵を撃て』とは
単行本として早川書房より、2021年11月17日に出版されました。著者である逢坂冬馬が、第11回アガサ・クリスティー賞を受賞したデビュー作です。第166回直木三十五賞候補に挙がり、2022年本屋大賞及び第9回高校生直木賞を受賞しました。内容説明
第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために……。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?
著者等紹介
逢坂冬馬[アイサカトウマ]
1985年生まれ。明治学院大学国際学部国際学科卒。本書で、第11回アガサ・クリスティー賞を受賞してデビュー。埼玉県在住。
ハヤカワ・オンライン
感想・その他
この本で描かれている独ソ戦について、私はほとんどなにも知らないことに気付きました。独ソ戦が1941年から続いていたこと、ソ連の死者数が軍人だけで1470万人、民間人も含めると2000万人から3000万人と推定されています。それに対し負けたドイツの死者数は軍人が390万人、民間人を含めると600万人から1000万人だそうです。因みに第2次世界大戦の日本人の死者数は民間人を含め310万人と言われており、独ソ戦の死者数の多さに驚かされます。開戦から1943年7月のクルスクの戦いまではドイツ軍の優勢で展開しましたが、クルスクの戦いの後はソ連が攻勢に出て、最終的には東欧からドイツ東部にいたる地域がソ連の占領地域となりました。1945年5月8日にベルリンで無条件降伏文書の批准手続きにより戦争は終結しました。
「敵(ドイツ)の敵(ソ連)は味方」の考え方により、イギリスとアメリカの軍事援助を受けたソ連は辛くもドイツの侵略から自国を守りました。大戦後に西側とソ連との一触即発の冷戦状態になるとは、この時は誰も予想できなかったことでしょう。
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